負け犬の遠吠え ~確定~
幸いに逮捕はのがれたのだが、あれ以来銭形を避けるようになった。
『逮捕だぁ~』
あの演出が、近未来の自分を物語っているようで、とてもやるせない気持ちになる。
全ての取り調べが終わった後、健二は自分の罪について調べた。
『収益移転法違反』
正式名称はもっと長く、覚えていない。確か、100万円以下の罰金か、1年以下の懲役だったと思う。健二は初犯で、組織的に売買していないので、いきなり懲役はないだろうと思っていた。
秋に取り調べは終わり、検察から連絡があったのは翌春だった。今思えば、この期間に少しでもお金を貯めておれば良かったのだが、健二はそこまで真剣には考えてなかった。
「ま、何とかなるだろう!」
根拠の無い楽観主義とでも言うのか、そんな調子で変わらずいつもと同じような生活を送っていた。
翌春、検察から連絡があり、健二は向かった。警察での取り調べ内容の確認があり、裁判をするか略式起訴をするかを尋ねられた。説明を受けてもいまいち理解出来なかったので、略式起訴を選択した。後で調べると、略式起訴を選択した時点で罰金刑が確定するようだ。
愕然とした。
お金が無くて罪を犯したのに更に罰金刑とは…
弁護士サイトや某知恵袋等で調べると、50万円前後だろうと健二は思った。
約2ヵ月後、裁判所から判決が届いた。
『左記の者を金400000円の罰金刑に処する』
今、手持ちは10万円。一月後の期限までにあと30万円…無理だ。
いや、ちょっと待てよ!
10万円を元に、毎日5000円をスロットで増やし、自分の給料と合わせれば、かき集めれば何とかなるかも知れない。
健二は本気で考えていた。
今考えると、(根本的な間違いは別として)当時の健二は沢山の判断ミスをしていた。
1つのホールで勝負しようとしていた。
そこはベタピンの店だった。
ジャグラーで勝負しようとしていた。
結果、3日でゼロになった。最後、トータルイクリプスを訳も分からず打ったが、ゼロになった。
「やっぱりあかんか。お金どうしよう。」
良くない時はよくない事が続くもので、同じ時期、勤めている会社の業績が落ち込み、給料も2万円程下げられた。
「検察に相談してみよう!」
健二は検察に行き、検察官に事情を説明して分割払いが出来ないか相談したが、刑罰なので一括しか認められないと言われた。
期限までに納めない場合は、督促状(期限は2週間)を発送し、それでも払わない時は催告状(期限は2週間)を発送する。それでも払わない時は出頭又は逮捕され、拘置所で1日5000円換算で労役をしなければならないとの事であった。
「80日かぁ。」
それで罪を償えるならとも思ったが、それまでにやれるだけはやってみようと思った。
調べると、自動車会社の期間工になると祝い金など、短期間でまとまったお金が入ってくるようだ。
「これや。」
健二は会社に辞表をだした。同時に期間工の面接を受けた。すぐに採用が決まった。場所は広島県だった。