スロットで月間プラス収支を目指すおっさんの奮闘日記

アラフォー 期間工 借金etc 悩み、もがき、追い詰められながらもそれなりに日々を楽しんで生きているおっさんです。日常の様々な事を記事にしています。2019年7月にフル満了で神戸市に帰ってきて、今は介護施設で働いています。

負け犬の遠吠え ~期間工生活~

期間工採用からの主な流れは、入社式→事務手続き→健康診断→作業着支給、が初日の流れで、翌日からは安全や騒音についての教育や、ボルト締めなどの基本作業の練習を行い、1週間程で職場に配属された。

 

健二はこれまで何度か転職してきたが、転職初日の挨拶や、周りのよそ者扱い(冷たい視線など)がどうも苦手だった。今回は特に未経験で若さもない、この状況を打破出来るような明るさやコミュニケーション能力もないので、不安でたまらなかった。

 

「若い社員に偉そうにされるんやろうな。」

 

「使えん奴やとか見た目で判断されるんやろうな」

 

ネガティブな方にばかり気持ちが向いていた。だが、目的は40万円の支払いなので、少なくともそれを達成するまでは辞められない。2ヵ月後…ここまでは頑張ろう、そう決意した。

 

 

ネットの情報でかなり頭でっかちになっていた健二だが、実際配属先に着いてみると…

 

挨拶しても帰って来なかったり、喫煙所で冷たい視線を感じたりはしたが、偉そうに言われたりすることは無く、特に役職者は教育されているのか、かなり丁寧に仕事の説明をしてくれた。

 

「これなら契約期間の半年は大丈夫そうだ。出来るだけ早く仕事を覚えよう。」

 

健二は少しポジティブになれた。

 

期間工の多くは会社の寮に入る。健二も寮住まいだ。『期間工』『寮』というと、何となくボロボロな所を想像していたが、実際に見ると意外にそうでもない。建物は確かに古いが、洗面所やトイレは改装されているし、部屋の畳も新しかった。ただ、共同生活なので、所謂『変な奴』は多い。大声を出す、トイレを詰まらせる、裸でウロウロする等、これまでの人生で出会った事がない人間をよく見るようになった。

 

健二にとってはとても新鮮だった。

 

「良かった。ここなら素の俺でいられる。」

 

変に取り繕ったり、背伸びしたりしなくて良い。クズの自分でもそれなりに生きていけると思った。気持ちが楽になった。

 

仕事は、入社が夏場だった事もあり、きつかった。ただ、簡単な作業なのですぐに覚えられる。1人前に仕事が出来るようになると近くで作業している人が声を掛けてくれ、やがては職場のほとんどの人と話せるようになった。スロットを打つ人も多いし、風俗や出会い系の話題も盛り上がる。

 

お金を貸してくれる人もいるし、健二も何度か貸した。簡単に頼れる人がいるので、お金が無いことは以前より増えたが、どうしようもない状況に陥ることはかなり減った。

 

収入も増えた。期間工になって、初めて年収が400万円を超えた。源泉徴収票をみると嬉しくなった。

 

スロットを打ちながら、借金も何とか返済出来ているし、たまには美味しいものも食べられる。3年で辞めなければならないが、広島にいる間は楽しもう。

 

当初は半年で辞めるつもりが、2年以上もいる。辞めるまであと1年足らずになってしまった。相変わらずお金は貯まらないが、それなりに楽しくやれてるし、スロットの立ち回りも覚えた。収支はマイナスだが、少しづつマシになっている。一時期どっぷり使っていたヤミ金からも足を洗えた。300万円近くあった借金も、もうすぐ100万円を切りそうだ。

 

あと、罰金刑の40万円も無事払えた。

 

 

高校生までは優等生で、インターハイにも出場出来、希望した大学に受かり、彼女も出来て、まずまずの所に就職したが半年持たずに挫折し、再び介護の業界で一から這い上がり、ひとつのセクションを任されるくらいにまではいった。結婚もして家族も持ったが離婚した。メンタルを壊し、また自分の未熟さも思い知らされた。そんな中で犯罪を犯した。それでもギャンブル依存症を克服できない。40過ぎても親父や友達にも迷惑をかけている。周りから見ると、あまり生きている価値のない人間だと思うし、自分でもそう思っている。早く死にたいと時々思う事がある。一度だけ、首をつってみたこともあった。めちゃくちゃ苦しかった。死ぬかと思った。でも死ねなかった。勇気がなかった。その時、死ぬことよりも、生きることを考えようと思った。恥をかいてもいいし、人を頼ってもいい。クズだと思われても、笑われても構わない。生きて、働いて、借金を返して、出来れば滞っている養育費も払って、親父が元気なうちに喜んで貰えるような事をして、尚且つ自分自身も笑って居られれば最高だ。

 

 

「スロットやめたいな。でも今は辞めれんな、楽しいし。もし楽しくなくなったら、その時やめよう。」

 

健二は爆音のスロットハウスに足を踏み入れた。

 

 

 

 

                                                               終わり