負け犬の遠吠え ～新天地～

広島での仕事が決まり、罰金の40万円も目処がたちそうだ。催告状の期限は大幅に過ぎるが、待って貰えば全額支払う事が出来ると伝えたら、渋々だったが待ってくれる事になった。どうやら、今の拘置所・刑務所は飽和状態のようで、罰金刑の人間には出来れば入って欲しくないようだ。また、財政の面からも、税金を使って労役をさせるよりは、罰金を払ってもらった方が潤う。

という訳で、犯罪者ではあるが、何とか普通の社会生活が続けられそうになった。

「兎に角罰金は必ず払おう。」

金曜日に最後の出勤を終え、土曜日の昼前に広島へ出発し、月曜日から期間工として働く…余裕のないスケージュールだが、贅沢は言えない。どんな仕事なのかも分からず、ネットではかなりきつい様なことをかいてあるが、辞めることは出来ない。40万円を払うまでは。

土曜日夕方に到着し、日曜日は休み。来る時に見つけた広島駅前の大きなパチンコ屋へ行く。

30分後…

全財産が400円ほどになる。泣きそうになった。月曜日には多分前の会社の給料が入る予定だ。それまで凌ごう。

月曜日、いよいよ期間工デビューだ。出勤前にコンビニで390円のタバコを買う。残りは10円と少し。この日の昼食は自分で用意しなければならなかったのだが、用意出来なかったので我慢することにする。

昼休み、夏場で喉がカラカラだったので、生まれて初めてトイレの水を飲んだ。何とも言えない惨めな気持ちになった。

「どこまで落ちていくんかな。」

改めて、健二は自分の置かれている状況を思い知らされた。

次の日の夜、銀行口座に入金があった。