負け犬の遠吠え ～兄について～

5歳上の兄について、と言っても彼は兄の事はそれほど知らない。歳が離れているという事もあるが、性格や趣味趣向が彼とは随分異なるという事の方が大きい。一緒に遊ぶことも無ければ飲みに行く事もなかった。

あまり好きになれなかったし、正直言って、勉強もできなく、運動神経も平均以下だった兄を少し見下していたところがあった。どちらかと言うと、反面教師的に兄を見ていた。

彼が思うに、兄も彼の事はあまり好きではなかった。趣味趣向が違うし、自己主張が強く、自分の言うことをあまり聞かない、また親の扱いも自分より弟の方が良い事も理由だが、小中高、それに塾と同じ所に進んだが、全て弟の方が良い成績であった事が、兄弟の関係を微妙な感じにさせた1番の原因であると彼は思っている。

高校卒業後、兄は経営系の大学に進学し、その後、就職したが何度か転職し、今は一流企業の営業をしているらしい。父から聞いた情報なので間違いはないと思う。

社会人になってからの兄は凄かった。主に営業職だったが、成績は何度も会社から表彰され、何より生き生きしていた。今務めている会社に入社してからは更に勢いがついたように感じた。5年以上前、最後に兄を見た時にそれは感じたが、兄嫁の兄に対する態度からも、兄の偉大さが計り知れた。

兄は輸入車が好きで、彼の知っている限り、5台は買い換えている。買い換える度にグレードが上がっている。

余談だが、車好きの兄が高級車に乗っていて、それを見下していた弟は自動車会社の期間工で汗だくになりながら車を作っている。借金まみれなので、勿論車は買えない。軽自動車さえも…

「もう兄には勝てない」

ずっと前から思っていたが、今改めてそう思った。